最優秀賞受賞作品①
 ぼくの一年生
                          前田 ぜん

ぼくは、小学一年生の時、たんにんの先生がこわくて学校に行きたくありませんでした。先生はぼくのことがきらいなんだと思っていました。ママに言っても、
「そんな気がするだけだよ。」
と言いました。

 ぼくは帰り道、友だちにかさをこわされたり、めいれいされたりして、いじめられたことがあります。つぎの日、先生はそのこにちゅういしてくれて、その子のお母さんともママは話しをしたそうです。今ではその友だちとはなかよしです。いっしょにあそんだりもしています。でもあの時のぼくは、帰り道がこわくて、ママにむかえに来てもらっていました。
  
 ある日、先生によばれて、
「あの子がこわいんか。なんもこわいことない。その子の顔を見てきな。明日からは一人で帰りな。」
と言われました。ぼくは、毎日むかえに来てくれるママにもうしわけないと思いました。
「ママ、明日から一人で帰るよ。」
と言うと、ママがおどろいた顔をしました。そのことを話すと、ママはかなしい顔をして、
「明日もむかえに行くよ。そんなふうに思わなくていいよ。先生にもそうつたえておくよ。」
と言いました。でもそれから、ぼくはぜんそくがでて、入いんすることになって、二週間くらい学校を休みました。

 休んでいると、どんどんどんどん学校へ行くのがいやになっていきました。でもママが、
「だいじょうぶ。行ってみたらきっと楽しいよ。」
と言っていたので、がんばって行きました。ぼくが休んでいて、できていないことがいっぱいありました。

 先生は、
「はよせい。みんな一人でした。」
とずっとおこっていました。ぼくはこわくって、かなしくって、むかえに来てくれたママに、
「学校かわりたい。」
と言いました。ママはまたかなしい顔をして、ぼくをぎゅっとしてくれました。


 つぎの日、先生がみんなの前で言いました。
「ぜんくんが学校をきらいと言っています。かなしいです。ちゅういするよりやさしい先生でおろか?」
するとみんな答えました。
「いいえ。」
「何でですか?」と先生が聞くと、
「かしこくならないから。」
と友だちが答えました。
「そう。かしこくならないから。」
そう先生は言って、子どものマネをしました。

「『これきらい!ふんっ』やさしいお母さんなら、『すねたの?いらないの?元気だして。』そんなお母さんいるか?」
みんな
「いいえ。」
と答えました。
「ふつうのお母さんならおこるとこわいよな。」
と先生が聞くと、みんな
「はい。」
と言いました。
「先生がちゅういしたぐらいで学校きらいにならんとって。またお母ちゃんに言うんか。」
と先生はおこりました。

ぼくは何がおこっているのか分からなくて、泣くのをがまんしていました。そこで、ママがれんらくちょうに、ぼくが学校へ行きたくないと言っていることを書いたことを知りました。

「先生あやまりますから。ぜんさん、ごめんなさい。」
と言って、先生が教室から出て行こうとしました。
「先生行かんといて!」
みんな先生をひっぱって止めていました。泣いている子もいました。先生はみんなをふりはらって、
「さよなら。」
と出て行ってしまいました。

「ぜんくんのせいや!」
友だちから言われました。ぼくは、れんらくちょうに書いたママにはらがたちました。
「どうしよう。どうしよう。」
ずっと泣くのをがまんしていました。
 ママに、
「なんで、れんらくちょうに書いたん。」
とぼくはおこりました。するとママはおどろいた顔をして、
「なんでれんらくちょうに書いたこと知ってるの。」
と聞いてきました。

ぼくはママにつたえました。なみだがあふれてきました。なかなかなみだが止まってくれませんでした。ママを見ると、ママも泣いていました。ぼくよりも泣いていました。泣きながら、
「ごめんね。ごめんね。」
とママはあやまっていました。

 その日、パパとママは校長先生とお話しをしに学校へ行きました。家に来てくれたばあばが、ぼくと妹の頭をやさしくなでてくれました。あとでママから聞きました。先生がみんなの前でぼくに言ったのが本当だと言ったこと。そのことでいじめがおきないように、校長先生や教頭先生がときどきようすを見に来てくれること。学校へ行くのがこわかったら休んでもいいと言うこと。そしてぼくは、何もわるくなかったと言うこと。

 ぼくはなやんだけれど、学校に行くことにしました。パパやママにあんしんしてほしかったからです。あと、休んでいると、行きたくない気もちが大きくなると思ったからです。先生もやさしくなりました。友だちとあそぶのも楽しくなりました。でもときどきあの日のことを思い出して、こわくなりました。

 二年生になって、クラスも新しくなりました。友だちと外であそぶのがすきです。学校は楽しいです。それでもほんとのときどき、あの日のゆめを見ておきてしまいます。ママがれんらくちょうを書いていたらどうしようとこわくなります。でも、ママが
「今日を楽しくいっしょにすごそう!」
と言ってくれるので、そうしようと思います。

 もしもぼくみたいになやんでいる人がいたらと思って作文を書きました。こまったら、言いにくくても、大人にそうだんしてください。ママも、
「ママもこまったら、一人でかかえこまず、早いうちに学校にそうだんするようにするね。」
と言っています。

  大人がぜんぶ正しいわけじゃないのです。子どもも大人もそうだんし合って、話し合って、考えて、生きていけたらいいなと思いました。あと、ゆうきがいるけれど、はじめの一歩、とび出すことです。一人でなやんでいては、何もかわらないのです。ぼくの一年生はいろいろあったけれど、はじめの一歩で学校に行くことができました。

 きゅう食がおいしいです。体いくと算数がとくいです。帰り道、スクールヘルパーのおじいちゃんが声をかけてくれるのがうれしいです。友だちと帰るのが楽しいです。家につくと、ママと妹が、
「おかえり!」
と元気いっぱい言ってくれるのがすきです。

「毎日、小さくてもいいから楽しみを見つけようね。」
とママとしあわせさがしをしています。



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